鳥を激写する。 鳥は、人間のコトバがわからない。 だから、 「明日行くから、待っててね」 とか、 「そのままじっとしてろよ、今、撮影するからな」 といった約束が出来ないのである。 となれば、 撮れるまで待とうホトトギス、 ならぬ、 「ケツァールを撮影できるまで、生息地に可能な限り延泊する」 というなんとも予定を立てにくい計画で、 この企画に臨むのであった。 2004年3月6日深夜 ホテルに到着する。 インターネットが利用できる。 となれば、仲間にメールを送りたくなるのである。 サンノゼの英語表記は「San Jose」。 「San Jose」。どこかで見覚えがある。 どこだろう。 アメリカ、である。 その、西海岸沿い、サンフランシスコのちょっと下にある、あの都市だ。 そう、サンノゼ。 荷物がアメリカ・サンノゼに行っちゃった カメラもない、いとかなし・・・ 「中
米・コスタリカ 幻の鳥を激写する」完
嘘である。 何がどこまで嘘かって? 簡単である。 荷物は、何ら問題なく、手元にある。 アメリカのサンノゼに行ってしまった、 というのが嘘なのである。 「コスタリカに、着いたよ」 などと、単純なメールでは面白くない。 コスタリカから送信するメールには、一ひねりする義務がある。 そこで、嘘をついたわけである。 しかも、この話も本家「水曜どうでしょう」のパクリなのであった。 番組内で実際に放映されていたものを、パクらせて頂いたのであった。 ちなみに、番組では本当に荷物が米サンノゼへ行ってしまっていたのだが… 後日「荷物はどうなったの?」 と仲間が聞いてくるわけである。 痛快でたまらない、のである(爆)。 心配してくださった皆さん、嘘です。 ゴメンナサイ。 許してください。 コスタリカ流のジョークです。 いやコスタリカに失礼だ。ゴメンナサイ…。 2004年3月7日午前7時前 ホテルの部屋のドアをノックする者がいる。 啄木鳥(キツツキ)ではない。 人間である。 今回の旅に同行してくれる、コスタリカ在住・旅行会社経営の加瀬さん、 である。 加瀬さん、 若い、のである。 事前情報として「おじさん」という情報を得ていただけに、 お互い顔を合わせ、 「お前誰だ?」 という顔をするわけである。 どうやら事前情報が間違っていたらしい、と気づくまでには時間がかかってしまうわけだ。 その加瀬さんは、日本から来る日本人のツアー企画・ガイド等を数多くこなしている。 加瀬さんは、自身のホームページで宣言しているのである。 「ケツァールの遭遇率は100%です」 と。 本家「水曜どうでしょう」班のてつを踏まないように、万全の体制で臨むのであった。 さて、その加瀬さんである。 早速加瀬さんの運転で最初の目的地「Irazu火山」へ向かう。 その途中、質問をしてくるのである。 「なぜ、コスタリカ、なんですか?」 だから、ケツァールだ、と言っているではないか! ということが伝わっているかは、定かではない。 とりあえず、いきなり「水曜どうでしょう」のことについては振れず、ケツァールに興味がありまして、なんて無難な回答をするわけである。 さて、Irazu火山。 山である。 だから、 天候は、 変わりやすい。 麓は、 快晴。 火山の入り口は、 濃霧。 加瀬さん「絶対に見られません」 こうして、火山観光を速攻で諦め、次なるポイント、このツアー最大の目的地サベグレへ向かうのであった。 サベグレ。 今回のケツァール探索をするポイントである。 あの、本家「水曜どうでしょう」班が行ったポイントである。 期待で胸が高まるのであった。 サベグレへは、サンホセから車で2時間弱国道を走り、さらに砂利道を10km弱進むと到着する。 そのサベグレへ向かう車中、加瀬さんは、バードウォッチングについて色々と教えてくれるのである。 加瀬さん 「ばーだー、はですね」 聞いたことのない言葉である。 バーター や バター なら知っている。 が、 バーダー である。 どうやら「birder」と書いて、バードウォッチングをする人、という意味らしい。 「バーダーは、視界に鳥が入ると『入りました!』と報告し合います。」 なるほど。 それは良いことを聞きました。 ケツァールを見つけたら「入りました!」というのが礼儀らしい。 これだけでもう、一人前のバーダーになった気分である。 が、バーダーはこれだけでは済まないらしい。 「バードウォッチングが終了したらですね、鳥合わせ、をします。」 鳥合わせ!? これまた聞き慣れない言葉である。 聞けば、私は○○と△△と◇◇を見ました! と報告し合うらしい。 なるほど。これまた良いことを教わりました。 これで、気分は百戦錬磨のバーダーになった気分である。 次なるレクチャーは、ケツァール撮影についてである。 加瀬さんは言うのである。 「ケツァールが飛んでいるところを撮影できたら、賞とれますよ」 と。 が、故に、である、 「ケツァールは(静止画用の)カメラより、ビデオカメラの方が向いています」 「…」 「ビデオカメラ、です」 「…」 そんなもん、持ってきてないのである。 こうして、場の雰囲気が重くなる一言でレクチャーは幕を閉じたのであった。 サベグレ、到着である。 所謂ホテル、などは全くない、小川に沿ってペンションみたいなのが数件ある、といった感じである。 今回のケツァール探しの拠点となる宿である。 名を「サベグレ・マウンテン・ホテル」という。 本家「水曜どうでしょう」のTV番組内では「サベグレ・ホテル」とだけ紹介されていて、同じ宿であるか、大変不安であった。 が、なんと“本当に”同じ宿であることが判明した。 素晴らしいことである。 先ほどの火山の件はすっかり忘れ、 運が良いかもしれない なんて信じ始めるのであった。 ちなみに、 このホテル、 実は、 急遽、 別のホテルからこのホテルへ、 予約を 変更したのであった。 用は、 狙ってこのホテルにしたのではなく、 単なる、 偶然、 なのであった(爆)。 本題のケツァールである。 地元のガイドをつけての探索を計画している。 本家「水曜どうでしょう」班同様、TV局並の体制で!?ケツァール探索に望むのであった。 が、その計画は、明日、だ。 今日は、の〜んびりと、ホテル周辺を探索する予定となっている。 でも、である。 わざわざ日本から丸一日の時間を費やしてやって来た「中米・コスタリカ 幻の鳥を激写する」ツアーである。 一刻も無駄にしてはならない。 そこで、全くな〜んの役にも立たないホテルが無料配布している地図(*2)を頼りに素人だけでのケツァール探索を開始するのであった。 *2 この地図、3年前に番組中で登場したときよりはパワーアップしてい
る。カラーバージョンになったのだ。しかし、3年前に「役立たず」の
烙印を押されていたが、数年経過した今でも、これといった改善が見られていない。が、現地でこの役立たずに地図をを見ると、妙に感激するの
であった。
標高が2000mから4000mくらいまであるサベグレ、である。 要するに、高所なわけだ。 が、普段高所に行くことのない日本人がこんなところに来るわけである。 箱根や軽井沢で森林浴でも楽しむか、程度のノリでケツァール探索トレイルに出かけるのである。 5分と経過しない段階で、息が切れる、のである。 息が切れる、は正確ではないかもしれない。 肩で息をする、という感じである。 そこで、初めて気づくのであった。 高所に来ていることを。 ケツァール探し、所ではなくなるのであった。 「リスが入りました!」 気分だけ一人前のバーダーは、こう叫んでカメラを構えるわけである。 おぃ、突っ込むなよ。 こっちだってわかってんだぞ。 リスが、鳥でないことくらい。 英語で撮影を意味する単語は「shoot」である。 シュートだから、 「ゴールしました!」 とシャッターを押す際に声を出すわけである。 嘘である。 「撃ちました!」 と声を出すのである。 似非バーダー丸出しである。 で、撃った写真がこれである。 リスの躍動感が見事に表現されている傑作である。 さて、リスが去った後のトレイルは、単なる奥多摩のハイキングである。 恐らく、周囲には日本では見ることのできない、或いは世界でも珍しい動植物の宝庫であったに違いない。 しかし、である。 素人には、何がなんだか、さっぱりわからないのである。 鳥は、鳥だし、木は木なのである。 ぜぁ〜んぶ、が同じなわけだ。 鳥の鳴き声だって、ぜぇ〜んぶ同じに聞こえるわけだ。 こうして不毛なトレイルが1時間以上続いたのであった。 「○※△◇#」 ケツァールの鳴き声である。 この不毛なトレイルに出発する直前、加瀬さんが教えてくれた。 「いいですか、ケツァールの鳴き声は『○※△◇#』ですよ」 と。 それと、同じに、聞こえる… 確信はない。 そして、距離はある。 恐らく、ケツァールの声ではないか、という期待を胸に、また1時間以上の奥多摩ハイキングを続けるのであった。 もう、夕刻。 そろそろ引き返さないと、ホテルに辿り着けない。 ここで迷ってしまっては、死んでしまいそうである。 引き返す時間のカウントダウンをし始めた・・・ と、 緑の木々の中でも、 とりわけ、 鮮やかな、 緑色の、 物体が、 目の前を、 横切るのであった。 ほんの、 一瞬である。 そして、 ちょっと先の木の枝にとまり、 音を、 発するのであった。 「○※△◇#」 と。 似非バーダーは声を失うのであった。 間違っても 「はいりました!」 とは言えないのである。 「は・い・り・ま・し・た・!・!・!」 超小声で発するのが精一杯である。 その物体は、 また、 音を発するのであった。 「○※△◇#」 と。 大急ぎで、カメラの電源を入れるのだ。 使ったことのないカメラとレンズで、一生懸命、その物体をファインダーの中から探すのだ。 そして、また超小声で言うわけである。 「は・い・り・ま・し・た・!・!・!」 「ピピッ、カシャッ」 続いて超小声で言うわけである。 「撃ちました!」 この緑色の物体は、撃たれたと同時に、また移動を開始し、視界から消えていくのであった。 しかも、もう一つの鮮やかな物体と共に。 この物体、「カザリキヌバネドリ」 というらしい。 「ケツァール」とは、似ても似つかぬ名前である。 が、 しかし、 である。 この「カザリキヌバネドリ」は、 和名である。 西洋では 「quetzal」 と書いて 「ケツァール」 と発音するらしい。 ケツァール。 もう、言うまでもない。 今回の旅の目的、「中米・コスタリカ 幻の鳥を激写する」のその幻の鳥の名前だ。 そう。 奥多摩ハイキングかと疑っていたこのトレイルは、 実は、ケツァール探索ツアーだったのだ! これが、撃った写真である。 「中
米・コスタリカ 幻の鳥を激写する」
完 サベグレ到着からわずか5時間後の出来事であった。 こうして、このツアー「中米・コスタリカ 幻の鳥を激写する」は幕を閉じたのであった。 いやいや、まだ終わりではない。 ケツァール探索の物語はまだまだ続くのである。 「なら、もう読むのやめた」 と心の中でつぶやいた“あ・な・た”、後悔するぞ。 最後まで、読んどけ。 ただし、本当に後悔したって、こっちは責任とらねぇからな。 そこんとこだけは、覚悟しとけよ! というわけで、まだまだ続くケツァール探索、である。 |