小話『映画鑑賞』2004年7月

スクリーンが真っ赤である。
スパイダーマンならこの真っ赤、理解できる。
しかし、Harry Potterは“黒”のはずだ。
赤、なんてあり得ない。

しかし、
である。

あり得なかったのは、
どうやら、
自分自身だったことが判明するのであった。

画面いっぱいに映し出される映画の題名。
それは、
ス パイダーマン2

全席指定の映画館である。
僕の席はE-8である。
シアター4のE-8である。

が、
しかし、
座っていたのは、
シアター3のE-8・・・

偶然とは恐ろしいものである。
シアター3のE-8には客はいなかったのである。
故に、
誰も、
僕の存在を、
不思議に思わないのである。

凍りついたのは、言うまでもない。
同時に腰を抜かした。
席を立とうにも、
立てない。


結局、本編129分のスパイダーマン2を見終えて、映画館を後にしたのであった。





このページの無断転写・掲載を禁止します。転載希望の方は必ずご連絡くだ さい。
リンクは自由です。
copyright 1997-2004 Hara Takatoshi